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『ニーベルングの指輪』完聴記(2)

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今週は「指輪」の第1夜 「ワルキューレ」 です。 このオペラは4部作中で最もよく知られている「ワルキューレの騎行」が含まれているので昔から単独で取り上げられる機会もあり第1幕だけの録音とかがあります。それだけ魅力溢れる作品であるともいえます。 確かに第1幕ではジークムントとジークリンデの恋愛を第2幕ではこのオペラの主人公と言って過言ではないブリュンヒルデの行動、そして第3幕ではブリュンヒルデとヴォータンの対話(対立)と永遠の別れ―それぞれにききどころと劇としての吸引力・緊迫感があります。 今回きいているベームのCDでもライヴならではの熱気が感じられてその緊迫した舞台の空気をきくことができます。 フンディングを歌っているゲルト・ニーンシュテットのドスの効いた声がいかにも山賊の親分といった知性はほどほど、腕力と存在感はあるという役柄にぴったりです。 そしてもちろん主人級のジークムント(ジェイムズ・キング)も立派で第1幕第3場、翌日のフンディングの対決を前にしながらも丸腰なのを嘆きながら武器を求め「ヴェルゼ!ヴェルゼ!」と歌う箇所の迫力! 第2幕では最初からヴォータンのテオ・アダムとブリュンヒルデのビルギット・ニコルソンの熱演に魅かれます。 そして、ここでもヴォータンは公私ともにイライラと怒りに悩まされます(きっと胃薬手放せない)そして妻から追い詰められ、娘に背かれてその存在感が希薄になっていく中で第3幕第3場の「ヴォータンの告別の場面」における歌唱は厳粛なものです。 オーケストラも当然すごいものです。第1幕前奏曲が嵐を表現する低弦部の動きがバイロイト祝祭劇場という環境も影響しているせいかもしれないのですがモゾモゾした響きが印象に残ります。きき所になる「ワルキューレの騎行」ではキラキラしたした響きを楽しむより端正な美しさがあります。 [配役]  ジークムント…ジェームズ・キング(T)  ジークリンデ…レオニー・リザネク(S)  フンディング…ゲルト・ニーンシュテット(B)  ブリュンヒルデ…ビルギット・ニルソン(S)  ヴォータン…テオ・アダム(Br)  フリッカ…アンネリース・ブルマイスター(M)  ゲルヒルデ…ダニカ・マステロヴィッツ(S)  オルトリンデ…ヘルガ・デルネシュ(S)  ヴァルトラウテ…ゲルトラウト・ホップ(A)

『ニーベルングの指輪』完聴記(1)

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今年はワーグナーの生誕200年。そして5月は22日は彼の誕生日。 買ったままのカール・ベーム指揮1966,67年のバイロイト音楽祭における『ニーベルングの指輪』全曲をききはじめました。 今まで放送や管弦楽版のディスクで断片的にきくことはあっても自分から進んできくことはありませんでしたが、こういった メモリアルイヤーに便乗してチャレンジすることにしました。 今日は序夜『ラインの黄金』から。 まずオーケストラの響きが充実しています。 ベーム=晩年のゆっくりなテンポで良い意味で重厚、言い換えると鈍重で残念な演奏の印象が強すぎたのですが、ここにはとても澄んだ音と推進力があります。それは彼の年齢やライヴという条件はもちろん、ベームという指揮者が典型的なカペルマイスターであったことであり、劇場、歌手、楽団員、聴衆に満足感を与える術を長い経験を通じて備えていたことは言うまでもないでしょう。 ひとつだけ挙げるとしたら第4場神々がヴァルハラヘ入城する場面、ここは当然きき手も陶酔に浸る所ですがー外声部の輝かしい音だけでなくて内声部がくっきり浮かびあがってきこえてきくるので高揚感も尋常ではありません! 歌手ではヴォータンのテオ・アダムは私共に苦悩するリーダーという役を陰を背負ったように、しかしちょっと抜けてるじゃないか?実際にこの物語ではヴォータンの優柔不断な態度が神々や周辺まで巻き込んで没落していくのだからー深い歌声がきけます。 それにしてもワーグナーという作曲家はケシカラン!です。ただの宝探し的ストーリーに神話を織り混ぜただけの展開をオペラにして、それも上演に4日間も!続けるとは。。。だいたいラインの乙女達が余計なおしゃべりをアルベリヒに言わなければこんなことは起きなかったのに!(だから女性のおしゃべりは・・・失礼しました。口を慎みます)っと言ってもミもフタも無いので来週末は第1夜『ワルキューレ』です。 [配役]  ヴォータン…テオ・アダム(Br)  ドンナー…ゲルト・ニーンシュテット(B)  フロー…ヘルミン・エッサー(T)  ローゲ…ヴォルフガング・ヴィントガッセン(T)  アルベリヒ…グスタフ・ナイトリンガー(Br)  ミーメ…エルヴィン・ヴォールファールト(T)  ファゾルト…マルティ・タルヴェラ(B)  ファフナー…クルト・ベーメ(