投稿

8月, 2014の投稿を表示しています

今週の1曲(26)~モーツァルト:弦楽五重奏曲第3番

今週は モーツァルト の室内楽の傑作のひとつ 弦楽五重奏曲第3番ハ長調K.515 です。 彼は弦楽五重奏曲を6曲―しかし、そのうち1曲は「ナハト・ムジーク」と呼ばれるK.388(384a)の管楽器のセレナードを編曲したものなのでオリジナルの弦楽五重奏曲と言えるのは5曲となるのですが、そのうちこの第3番から最後の第6番までの4曲はどれも傑作ぞろいです。 弦楽五重奏曲というのは通常、ヴァイオリンがふたつ、ヴィオラとチェロがそれぞれひとつという編成にヴィオラをもうひとり加えます。モーツァルトはヴァイオリンも弾きましたが、親しい仲間たちと室内楽を演奏するときはヴィオラを担当したと記録されているので、この作品を演奏するときもおそらくヴィオラを弾いたと思います。そのためか中声部であるヴィオラが充実していることもあり、活躍する場面を書いています。 モーツァルトが記録していた作品目録によると1787年4月19日に完成されたとされる第3番は規模・構成からみてもモーツァルトのこの分野における到達点の極みといわれます。 同時期の第4番ト短調K.516が第40番のシンフォニーに例えらるように、この第3番ハ長調K.515は「ジュピター・シンフォニー」と並び称されます。まあ、おききになればそれは誇張ではないことが分かると思います。そして、珍しいことに溢れ出る楽想を流れるように楽譜に書きつけたと思われている天才モーツァルトが何度も書き直しをしていることが自筆譜に確認されるそうです。それから、不思議なことに当時は曲を書いて出版することが生活の糧であったにも関わらず、1789年まで自ら出版をしなかったそうです。 アレグロ―アンダンテ―メヌエット―アレグロという一般的な4つの楽章からなっていて第1楽章のヴァイオリンの上昇していくメロディーはハイドンの「ひばり」のニックネームをもつカルテットの第1楽章にも通じる典雅なものです。それが古風なものでなく、口笛を吹いてスキップをしているモーツァルトがいるみたいですた。また、全曲を通じて音楽は堂々とした風格とオーラがあります。第3楽章はそのメロディー進行と強弱のリズムが「ジュピター・シンフォニー」にとても似ているように思います。 《Disc》 こういった構成がしっかりしている作品はアメリカの ジュリアード・カルテット に ジョン・グラハム

フランス・ブリュッヘンさん追悼

イメージ
8月13日、オランダの指揮者 フランス・ブリュッヘン さんが亡くなりました。 そこで今週のこのブログは彼を偲ぶ回にしたいと思います。 1934年生まれなので79年の生涯だったことになります。指揮者は80歳を超えて現役という方がいるのでもう少し生きてほしかったです。。。 彼はリコーダー奏者としてデビューしてちょっとチャチに見られがちなこの楽器の地位向上に大きく貢献したそうです。私は彼が指揮者に転向してからしか知らないので、現役時代、ニコラウス・アーノンクールやグスタフ・レオンハルトといった古楽演奏家の第一世代の人たちと残した様々な録音できいたのみですが。 1981年にはオリジナル楽器による「18世紀オーケストラ」を創設しました。 この団体は1年間に2,3回、本拠地アムステルダムに各地から固定メンバーが集結。リハーサルをして世界演奏旅行に出発し、帰国後のコンサートをライヴ収録したものを活動記録のようにしてディスク化して発表をしていました。 その演奏旅行で毎日繰り返し演奏しても飽きない『傑作のみ』をとりあげるとブリュッヘン自身が述べていて、名前のとおりバッハ~ハイドン~モーツァルト~初期・中期のベートーヴェンあたりが創設時の中心レパートリーでした。 他の同業者(ホグウッド、ガーディナー、ノリントン、アーノンクールetc)がベートーヴェン、ベルリオーズ、ブラームス果てはワーグナーやブルックナーあたりまでレパートリーを急速に拡大している状況に背を向けるように、限られたレパートリー繰り返し取り組む姿がストイックで 「音楽の求道者」 みたいで「カッコイイ」と思いました。全盛期の90年代にきいた演奏はどれも手垢のついたスコアをきれいさっぱり洗濯をしたようにきこえたので、今世紀に入ってからのやや守りにはいったような演奏をきいた時は、想い出の女性に久し振りに再会したら容姿がすごく変化していた―みたいな寂しい思いをしましたが― 彼の生演奏には3回接することができましたが、当時まだ音楽を詳しくきき取る耳を持っていないにもかかわらず、その体験は強く残っています。 *初めてきいた時のベートーヴェンの序曲「コリオラン」の切り裂くような冒頭和音。同じ日のアンコール、モーツァルトの歌劇「魔笛」序曲のムクムク沸き立って躍動的に動きまわる音。  1回めの時