『ニーベルングの指輪』完聴記(4)
ついに 「ニーベルングの指輪」完全聴破も「たそがれ」編!!
本日はその第3夜楽劇「神々のたそがれ」
あ~長かった、くたびれた。。。というのが第一印象。
ここ1か月ワーグナーの音楽が連日頭の中でグルグル回り、彼の音楽は「麻薬」といわれるけれど本当にそうです!
そして上演に5時間超!序幕と3幕11場!!というオペラの恐竜みたいなきき手にも演奏家にも体力・精神力を要求する作品。4部作の最後を飾るにふさわしい規模をもっています。
対訳本上下巻で660ページを超える! |
*複数の人物が同時に違う歌詞を歌うのはドラマ的ではないとして「オペラとドラマ」という論文で書いているそうです。
そういった面では「ジークフリート」が新しい響きに満ちていたのに対してこの作品はオペラ的な感じがするのできき易いかもしれません。
第1幕第2場ヨーゼフ・グラインドルのハーゲンが独白する場面ではこのキャラクターが持っているとてつもない腹黒さが見事に表現されています。
ジークフリートと妾腹の子である自分の身分の差を比べつつも自らの計略第1段階が成功したことに喜びつつ
「das Niblungen Sohn」 (このニーベルングの息子に)と歌う瞬間はゾッとします。
第2幕第5場、裏切られたと思い込んでいるブリュンヒルデ、迷うグンター、指輪を手にしたようにほくそ笑み3者の思惑が入り混じりながらジークフリート殺害の陰謀が仕組まれるところ―グンターが歌う「Sigfred Tod!...」(ジークフリートの死か!...)という歌詞はその前に感情を込めてハーゲンがグンターに向かい「dir hilft nur Sigfred Tod!」(お前を救うのは、ただ、ジークフリートの死だ!)と言ったことへの返答であることからインパクトが小さくてそのまま聞き逃してしまいそうですが、この英雄・悪人・偽善者・・・などなど強烈キャラクターばかり登場する「ニーベルングの指輪」ではどちらかというと印象の薄いのですが、ギービヒ家の惣領にして領主でありながら臆病で、虚栄は張りたい内面の葛藤をよく表し、これから展開する終末を決定づける言葉ではないでしょうか?
トマス・スチュアートがその揺れ動く心から、ハーゲンに言うでもなく、独り言でもなく、ポツリと歌っっています。
それと同様な言葉に第3幕第2場ジークフリートを殺害したハーゲンに対してグンターが「Hagen-was tatestdu?」(ハーゲン、なにをしたのか?)という所もこれから起きる終末、そして、自分の死をも恐れていることがわかります。
そういった重要と思われる言葉を目立たないキャラクターに与えているいるのでワーグナーの作品はストーリー理解だけでなく、言葉と音楽の結びつきまできき取らなければならないのでもシンドイです。
そこから物語は坂道を転がり落ちるように運命が急転直下していくのですが、オーケストラの音はテンポを加速したり、減速するという手を使用して盛り上げたりせずにふつふつとした高揚感がきこえてきます。そこは「劇場人ベーム」の腕の見せ所、決して聴衆を落胆させて帰らせることはない高品質な音楽を創り上げることに関しては一流であった彼の意地がきこえると思います。
その響きは艶やかで滑らかなものではないですが、こういった白熱した臨場感に満ちた演奏はなかなか出会えないのでは?と思います。そのベームの現代進化形としてクリティアン・ティーレマンに期待しているのですが。
[配役]
ジークフリート…ヴォルフガング・ヴィントガッセン(T)
グンター…トーマス・スチュアート(B)
アルベリヒ…グスタフ・ナイトリンガー(Br)
ハーゲン…ヨーゼフ・グラインドル(B)
ブリュンヒルデ…ビルギット・ニルソン(S)
グートルーネ…リュドミラ・ドヴォルジャコヴァー(S)
ヴァルトラウテ…マルタ・メードル(メゾ・S)
ヴォークリンデ…ドロテア・ジーベルト(S)
ヴェルグンデ…ヘルガ・デルネシュ(S)
フロースヒルデ…ジークリンデ・ワーグナー(M)
第1のノルン…マルガ・ヘフゲン(A)
第2のノルン…アンネリース・ブルマイスター(A)
第3のノルン…アニア・シリア(S)
カール・ベーム指揮バイロイト祝祭管弦楽団・合唱団
1967年7月27日、8月14日 バイロイト祝祭劇場(ライヴ)
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