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今週の1曲(16)~ヴィターリ:シャコンヌ

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今週ご紹介する1曲はバロック時代のイタリアの作曲家 トマゾ・アントニオ・ヴィターリ Tomaso Antonio Vitali (1663~1745)の ヴァイオリンと通奏低音のための変奏曲 「シャコンヌ」 です。 ヴィターリは同じく当時著名な作曲家ジョヴァンニ・ヴァティスタ・ヴィターリを父親にもち、生涯のほとんどをモデナの宮廷楽団でヴァイオリニスト・作曲家として活動しました。 父親の作品は現在でもそれなりに残っているのに対し、息子の方はこの曲のみで名前を留めています。しかし、彼には申し訳ないですが多くの歴史の中に消えていってしまう作曲家がある中で、300年以上前のこの1曲でも弾かれ、きかれ続けてきたことはきき手にもヴァイオリニストにとっても幸せなことではないでしょうか? 「シャコンヌ」とはイベリア半島を起源とする3拍子の舞曲の一種で、イタリア半島に伝播してフランス~ドイツへと伝わりバロック時代には変奏曲における形式として定着しました(中でも最も名高いのは言うまでもなくJ.S.バッハの無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第2番の終曲ですよね)しかし、その後の古典派~ロマン派になると古い音楽の形式と考えられて廃れてしまいました(ドイツ音楽の至高を目指したブラームス―交響曲第4番の終楽章やシェーンベルクの作品に登場する程度になってしまいました) この曲はヴァイオリンの名人といわれたヴィターリによって様々な技法を駆使して主題と変奏が展開します。あまり深刻になりすぎず、かと言って情感もしっかり表現されています―この作風はこのジャンルにおける完成者といわれる、先輩アルカンジェロ・コレルリの影響があるといわれています。その流れが後のパガニーニへと繋がっていった種子があるように思います。 例の大バッハの「シャコンヌ」が孤高で他者を寄せ付けない存在としたらこちらは地中海の気候のように明るさと華やかさをもっているので親しみがあります・・・でも、この曲に現在「偽作説」が出ています。。。 《Disc》 愛聴盤―ベルギー出身の往年のヴァイオリニスト、 アルテュール・グリュミオー (1921~1986)と リッカルド・カスタニョーネ のピアノによるものです。 「原典主義」を掲げる人からはグリュミオーが楽譜に手を加えて編曲していて伴奏が当時存在しなかったピアノである

今週の1曲(14)~モーツァルト:ピアノ協奏曲第12番

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彼が作曲した番号付きのピアノ協奏曲は全部で27曲。中でも演奏機会に恵まれているのは20番から27番に集中してますが、その前の10番台にも魅力ある作品があります。 20番台の協奏曲に接するときは演奏家もきき手もどっか構えたところがあるような気がしますが、10番台の方は気軽な気持ちで楽しめるのでフト、 モーツァルトのピアノ・コンチェルト を何かききたいと思った時に手にすることが多く、その中でどれが一番ということはなくてその日、その時に気分で変わります。 今回は ピアノ協奏曲第12番イ長調K.414(385p) をご紹介します。 コロレド大司教と大ゲンカをして故郷ザルツブルクを飛び出したモーツァルトがウィーン移住後の1782年に予約演奏会のメインとして自身のピアノで弾くために第11番から第13番までの3曲が書かれました。彼にとっては約3年から5年ぶりのこの分野での新作で、最後の27番まで続くウィーン時代のピアノ協奏曲群のスタート地点に当たる作品です。 曲は一般的な協奏曲のスタイルで「速い―遅い―速い」という3つの楽章からできていて、カデンツァはモーツァルト自身が書き残しているのでほとんどのピアニストもそれを弾きます。 第1楽章アレグロではささやくようなオーケストラで始まり、それを受けるようにしてソロが入ってくるのですがそこの感じが絶妙です。 第2楽章アンダンテは静けさと落ち着きをもった音楽で、チョコッと第1楽章のフレーズに似た箇所が顔を出します。 第3楽章のアレグレットはおどけたようなロンドに始まってリズミカルにピアノが駆け回るところはモーツァルトがウィーンの聴衆にアピールしようとしているように思います。 《Disc》 有名どころのピアニスト(バレンボイム、アシュケナージ、ブレンデル、内田光子etc)はみんな録音しているので好みの演奏家を選べば間違いないです。 マレイ・ペライア がイギリス室内管弦楽団を弾き振りしたものはとにかく磨かれた音、楽譜を読み込み考え抜き生みだされたような音に感心します(録音:1979年) そして思い出したようにきくのはオーストリア出身のピアニスト、 ワルター・クリーン (1928~1991)の歌心たっぷりに弾かれる音をきいてカサカサに乾いた耳と心に水分を与えます。ただし、バックを務めるギュンター・ケール指