モーツァルト:交響曲全集完聴記(その7)

今週もホグウッドのモーツァルト交響曲完聴シリーズの7回めです。

CD5

交響曲第18番 ヘ長調 K.130

前にきいた第16番と第17番の交響曲と同様に1772年5月に作曲されたといわれています。3楽章形式だった前2曲に対してメヌエット&トリオを加えた4楽章からなり、楽器編成もオーボエからフルート2本にかわり、ホルンも4本に増えています。
編成の拡大に伴い音楽の構造も深化しています。それはちょうどこの年に4月にザルツブルクの大司教にコロレド―モーツァルトの伝記では必ずと言ってほど悪人として描かれている人物ですが―が就任していて、モーツァルトとしては新大司教に自身の才能を見せたいという意図が感じられてくるようなシンフォニーです。
大人しいイメージの第2楽章アンダンテ・グラツィオーソでは2本のフルートと4本のホルンで響くので優美さとたくましさが同居したような音楽になっています。
メヌエットも短いながらもブルックナーを思わせるリズムが印象的な所です。
終楽章は弦楽器と管楽器が見事な対比をきかせてくれます。どことなく音楽の運び方が、クリスティアン・バッハやマンハイム楽派と呼ばれるシュターミッツなどの影響が復活しているみたいです。でも、決して後退ではなくて音楽が素晴らしいものになっています。
★★★★


交響曲第19番 変ホ長調 K.132

この曲もフルートがオーボエに変わっただけで4本のホルンが含まれるのが特徴のシンフォニーです。まず驚くのは13年後に書かれる同じ調性の第22番K.482のピアノ・コンチェルトに似た第1楽章のテーマの登場です。
第2楽章はこれまでのシンフォニーに比べ格段に長大な緩徐楽章で、半音階的な動きでかなりロマンティックなもので、ここでは同じ変ホ長調の第39番のシンフォニーにつながっていく種がまかれているように思われ、モーツァルトの魅力が味わえます。
メヌエットでは4本のホルンが効果的に使われて充実した響きがきけます。トリオが宗教的な厳かな雰囲気を持っています。
終楽章は古風なバロック時代の舞曲を思わせる音楽に意表をつかれます。
ここで追加として本来このシンフォニーの第2楽章だったアンダンテ・グラツィオーソが収録されています。全体とのバランスを考えてかシンプルなものです。
★★★☆


交響曲 ニ長調 K.185(K.167a)

拡大路線ホグウッドのモーツァルト交響曲のひとつ。セレナード第3番から4つの楽章を抜き出してシンフォニーとして演奏しています。
第1楽章トランペットとティンパニを含む大編成なオーケストラの和音から躍動的な音楽へと投入していきます。
アンダンテ・グラツィオーソの第2楽章、リズミカルで舞曲みたいな感じで弦楽器と管楽器の対照が明るく楽しい宴をしているようです。その勢いのままメヌエットへ入っていきます。
終楽章にはアダージョの導入が演出力バツグンで、主部に移ると襟を正したような格調高いもので―これはこのセレナードの依頼主・初演される場所がザルツブルクの大学での卒業祝いのために書かれたということとも関係しているのかな?中間部で出てくるメロディーがブラームスの大学祝典序曲で出てきてもおかしくないようなドイツ風なものであるのが印象的で、様々な思い出を振り返りながら、別れを惜しみながらこれからの新しい門出に期待を膨らませている様子が浮かんでくる音楽です。
★★☆

【演奏メモ】
全体的にコンティヌオがかなりクッキリきこえてきて、本来のセレナードでは含まれないがここではシンフォニーとして演奏しているのでニ長調K.185(K.185)でも楽器間の隙間からきこえてきます。
躍動感のある速い楽章での時として弦楽器がぶつかり、きしむ音が熱演(ニ長調の第1楽章など)

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