今週の1曲(35)~テレマン:12の幻想曲(無伴奏ソロ・ヴァイオリンのための)

皆さんはゲオルク・フィリップ・テレマン(1681~1767)に対する認識はどんなものでしょうか?

J.S.バッハよりも4歳年長で、なお17年も長生きした彼は20歳そこそこでアイゼナハの宮廷楽長から教会務めを経てハンブルクの街の音楽監督として過ごした時期に代表作と言われる「ターフェルムジーク」や協奏曲などの数々を残しています。また、そういった作品を出版して収入を得るといったビジネスの才能もあって、当時はドイツの地方都市の楽長でしかなかったバッハに比べることもできないくらいの名声と人気を誇っていたそうです。

作風は表現がストレートで長調では明るさと温かさ、時にはジョークを交えつつ、短調ではマジメな顔つきでとメリハリがはっきりしています。技巧的なところやきれいなメロディーもあるので才能が豊かであったことは確かで、休日の朝のひと時や精神衛生上からもふさわしい音楽でしょう。
でも、ここまでテレマンの作品が残ってきたのは新しい感覚を身に付けていた人で、特に晩年はドイツの文学運動から派生した「シュトゥム・ウント・ドラング」の時代でありましたが、そういうものには染まらず、バッハの息子たち―フリーデマンやエマヌエルなど前古典派のような響きにも似ています。

しかし、私にとってはテレマンが大作曲家なのかビミョーな位置にいます。一般でもこのオリジナル楽器演奏氾濫のなかそれなりに演奏もされ、ディスクの数もあるのにバッハやヘンデル並みの扱いではないと思います。
それは彼があまりににも多くの曲を書きすぎたということに尽きるのではないでしょうか?
その数4,000曲!オペラや声楽曲、器楽曲、室内楽曲、オーケストラ組曲、そして当時あった楽器の全ての組み合わせで書いたんじゃないかと思われるコンチェルトの数々!
例えばソロコンチェルトはもちろん、二重奏以上の合奏協奏曲もヴァイオリン、フルート、リコーダーあたりの組み合わせは普通で、3本のオーボエやホルンのためのもの、確か3本のトランペットにオーボエだったかフルートが加わり、ティンパニも入るコンチェルトを目にしたことがあります(未聴ですが音量的にはかなりにぎやかというかグロテスクな感じが漂ってきそうです・・・)

そんな子だくさん?なテレマンから

独奏ヴァイオリンのための12のファンタジー(幻想曲)

 をご紹介します。

この12のファンタジーもさすがテレマン、オーボエ、フルート独奏用なども残しています。
名前のとおり、長・短調の4分から7分位の12曲からなり、急緩急の3楽章であったり、緩急緩急の4楽章であったりします。
当時の楽器でやりきれることは全て挑戦しました。というような技巧的な作品で、即興的な要素も盛り込まれ、バッハの無伴奏ヴァイオリンのためにきかれるような暗くて重苦しさよりも、自在な技巧と流れるようなメロディーがパガニーニの24のカプリースへと繋がっているような気がします。

【ディスク】
現在のバロック・ヴァイオリンの名手たちに録音してほしいのですがこれといったディスクを知りませんので、唯一持っているベルギー出身のアルテュール・グリュミオーのものを―
オリジナル楽器の表現からすればコッテリしすぎと感じるかも知れませんが、その滑らかで贅沢な位の耳触り、技巧的なフレーズにおいても汗の一粒も感じさせない優雅な立ち振る舞い―この魅力に惹きつけられると前言を撤回して「オリジナル楽器演奏をきけなくてもいい」という気持ちになります。

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