インバル/東京都交響楽団 [新]マーラー・ツィクルスⅣから

東京芸術劇場リニューアル記念

エリアフ・インバル指揮東京都交響楽団 

マーラー 交響曲第9番 ニ長調

於:2014年3月15日 東京芸術劇場




地方からわざわざ出掛けた価値のある演奏会でした。
私がきいたのは3階席でしたが冒頭、ホルン、チェロそしてハープで紡ぎだされる1音1音がこちらにもクッキリときこえてきました。そこへ第1主題が入ってくると湖上をボートに乗って漕ぎ出すみたいになめらかで清らかな響きでした(交響曲第7番の第1楽章序奏のテーマのインスピレーションを受けたのがこうゆうシチュエーションだったと作曲者本人が奥さんのアルマに伝えていますが、この交響曲も彼の生活環境を結びつけるものが感じられます)
曲が展開部に入ると会場に打ち鳴らされるシンバルや打楽器による音のパワーもきき手に恐れや怯えといったものを与えます。この部分から後半部にかけて頭に浮かんでくるのは船が沈没して海に投げ出された乗員・乗客が漂い、助けを求め手を上げもがきながら波に呑み込まれていっていってします姿です。
第2楽章はオーケストラの響きにキレがあり遅いところから速くなったり、強奏される時のレスポンスが良くて場面展開を見事に切替えていきます。第3楽章も同様で、対位法的な箇所ではマーラーの作曲技法の円熟をきき手にアピールし、442小節から頂点を迎える音楽は熟れた果実のように後は腐敗していくように―それをわかっていながら目を背け狂乱しおぞましい世界が繰り広げられます(昨日と同じ今日が来てくれることを当たり前としているかのように・・・)インバルの指揮は音楽に没入しすぎないで的確なコントロールをしているように感じました。それが「音楽に入っていかない」というわけではないのが彼のマーラーに特徴的な冷静さと熱気が融合しています。
第4楽章ではそういった持ち味を存分にきけました。
一回きりのナマ演奏なら情緒たっぷりに乗り切ってしまうことも可能な音楽をハイドンが種をまき、ベートーヴェンが地位を確定させ、続くロマン派のブラームスなどが力を注ぎブルックナー、マーラーにより「ソナタ形式」を金科玉条として特にドイツ、オーストリア音楽圏で恐竜のように進化した「シンフォニー」というジャンル。それがこの交響曲では「徹底的に」朽ちて滅びていく姿としても解釈できるような演奏と思いました。それが宗教的な祈りも感じる中で昇天していくのも特徴でした。
他にもいろいろ上げたらきりがなく、心揺さぶられる演奏でクタクタになりこれ以上言葉にして書く能力もないのでここまでにさせていただきます。

インバルと東京都交響楽団のコンビ
現在これだけ感銘深いマーラーがきけるのがベルリンでもウィーンでもなく東京というのがうれしいです。

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