今週の1曲(9)~シューベルト:交響曲第6番

シューベルトが残したシンフォニーは未完や断片を含めると10曲を超えるらしいですが、現在残っているのは完成した7曲と「未完成」といわれる1曲(でも充分に完成品といえる作品です)そしてよく演奏会などで耳するのはほとんど第7(8)番「未完成」と第8(9)番「ザ・グレート」の2曲ばっかり(10歩譲ってあとは第4番「悲劇的」と第5番くらいカナ?)
なかなか他のシンフォニーはきく事はないですが魅力のある部分もあります。

今回紹介するのはその中から交響曲第6番ハ長調D.589です。第8(9)番「ザ・グレート」が「大ハ長調」という別称があるのに対してこの曲は「Litte C mejor」=「小ハ長調」と呼ばれることもあります。
曲はシューベルト20歳の1817年秋に着手され翌年2月に完成しました。ちょうどこの頃は父親の勤務先、ロッサウという場所で助教員の仕事をしていましたが1818年の夏にはその職を辞めてしまいます。
この時期にこの曲以外に目立った作品が無いのはそういった落ち着かない生活が関係しているかもしれません―父親の許でそれなりに安定した生活をしつつも将来への夢や希望を持った青年シューベルトは悶々としていたと想像できます。しかし、このシンフォニーからは前向きでアグレッシブな音楽があちこちにきこえてきます。

第1楽章は重厚なアダージョの序奏に始まり、きびきびとしたアレグレットの主部に入っていきます。目立つのは木管楽器の活躍です。終止部にかけてのクレッシェンドは当時ウィーンで大人気のロッシーニを思い浮かべます。
第2楽章アンダンテはややハイドン流の香りが残りつつもダイナミックなところは彼の若さが溢れているようです。
第3楽章。ここで初めてシューベルトはメヌエットではなくてスケルツォにしました(それまでの5曲にも既にスケルツォ的性格をもっていましたが)こういったことも野心的な感じがします。そしてこの楽章はベートーヴェンの交響曲第7番第3楽章スケルツォへの共通があるように思います。特にトリオの部分なんかは似ていると言いたいくらいです。
第4楽章アレグロ・モデラート。強弱の対比を繰り返しながら発展して曲が盛り上がっていく面白い音楽です。この手法・リズムは「ザ・グレート」にも密かに通じているようにチョット思いました。

私がこの曲に出会ったのは中学3年の春でFM放送から流れてくるきいた事が無いのにどこかできいた事があるような音楽に魅かれ「ハイドン?モーツァルト?」それにしては響きがもっと新しいような気がする・・・もしかするとまだきいていないメンデルスゾーンとかシューマンかな?などと考えていると曲が終わり、この交響曲であることを知りました(演奏はクラウディオ・アバド指揮ヨーロッパ室内管弦楽団でした)
まるで昔の友人に街中で久し振りに再会したような―懐かしいというか、いい空気をいっぱい吸い込んだ気持ちになる作品です。

《Disc》
初めてきいたアバド盤は本当に親しみをおぼえる演奏です。でもよりアグレッシブな面がでているのがマルク・ミンコフスキが自らが組織したオリジナル楽器のオーケストラ、レ・ミュジシャン・デュ・ルーヴル ・ グルノーブルを指揮したものです(2013年3月ライヴ録音)きこえてくるひとつひとつが驚きと発見の連続です。ピチカートの音だけでもみずみずしくて印象的です。

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