クリストファー・ホグウッドさん追悼~モーツァルト:交響曲全集完聴記(その1)

去る9月24日にクリストファー・ホグウッドさんが亡くなりました。
70年代~080年代を中心にオワゾールというレーベルに数多くの録音を残して古楽器演奏というジャンルを学者の研究対象から一般の音楽ファンの鑑賞対象にしたことに大きな貢献があり「オリジナル楽器界のカラヤン」といったような比喩をきいたような気がしますが、まさにその通りだと思います。
ちょうど先日よりホグウッドと自身が組織したアカデミー・オブ・エンシェント・ミュージック(エンシェント室内管弦楽団)と78年から86年にかけて録音したモーツァルトの交響曲全集を少しずつきき始めてきいたところでした。
モーツァルトの交響曲は全41曲という常識を覆した彼らの代表的なディスクといえるもので、その収録曲数は全71曲!CDも19枚にも及びます。まだ音楽業界も体力があった時代だから実現できたもので、それから30年が経過してもこの企画を演奏の質はおいておいても、量的には現在も凌駕されていないのではないでしょうか?



今回、彼の死を機にモーツァルトの交響曲全集をきいていき、その試聴記録として投稿していきたいと思います。しかし、ディスクを次々にきいていく習慣がないので全曲をきき終わるのにいつまでかかるか見込みはありませんがよろしくお願いします。

このディスクは番号付きの作品だけでなく、オペラの序曲から断片、果ては出所のアヤシイ偽作(疑作)説のある曲までも網羅し、偏執的なくらいで、多少上げ底気味な感はありますが全部で71曲になっています。

CDは番号順(作曲年代順)に収録されていないため―今回、廉価盤のセットとしてきいている19枚は当初発売された時はそれなりに考えられていた組み合わせであったのに対して、収録時間重視でかなりバラバラな順番になってしまっています・・・(完聴記ではCDの収録順にきいていく予定です)
なおかつ、収録年データや曲名も簡略化されていてジャケットもそっけないものになっているのが残念です。。。廉価盤だからといわれればそれまでですが・・・。

また、この演奏はクリストファー・ホグウッドはコンティヌオ(通奏低音)としてチェンバロを担当してコンサート・マスターのヤープ・シュレーダーがリーダーを務めている。つまり音楽解釈は前者、演奏現場の監督は後者というような手法で録音したそうなのですが、イマイチそれが音楽にどう影響しているかは不明です。

個々の曲に星印★でランク付けしていきますが、あくまでも個人の主観と、きいた時の気分の印象ですのであしからず。

  
★★★★★   最高!!絶対きくべし!!!
★★★★     いいね!きいてソンは無し!!
★★★      意外といいね!きくかきかないかはアナタしだい。
★★        まあまあ。きいてもきかなくても問題ナシ。
★         偽作・疑作―モーツァルトらしくないなぁ~。
*☆は★の半分
 

それではクリストファー・ホグウッド氏追悼~モーツァルトの交響曲全集完聴記(その1)をスタート!


CD1

・交響曲第1番 変ホ長調 K.16

 はじめてこの演奏できいた時からぞっこん惚れ込んだシンフォニー。さんざんほかの方も述べてる感想ですが「8歳の子供が書いた曲とは思えない」と、いつきいても思います。
第1楽章の雲ひとつない青空の許、そよ風が流れていく様な新鮮な響き、第2楽章アンダンテでは田舎の教会に村人達が集まりローソクのほのかな明かりの下で祈りをささげているイメージがうかんできます。第3楽章では狩猟に出掛けていく勇ましい音楽。
★★★★★
 
 
・交響曲 第4番 ニ長調 K.19
 
 第1楽章ホルンがいななくようにして開始され、そのモチーフが弦に受け継がれます。せわしなく、落ち着きがない。第2楽章ヨーデルの模倣と思しきメロディーが出てくるがアカ抜けない音楽。第3楽章はしつこいくらい同じリズムが強調され、リピートされます。
★★★
 
 
・交響曲 ヘ長調 K.19a(Anh.223)
 
 1981年にミュンヘンで発見されたシンフォニー。
 第1楽章弦がユニゾンで軽くさわやかなメロディーを奏します。その後の展開も湧き上がってくる喜びがそのまま音楽になったみたいです。第2楽章優美なメロディーで、チェンバロの通奏低音をギターに変えたらセレナードになりそうな「歌」のある楽章です。とっても魅力的。これが9歳の少年モーツァルトの表現力に驚き!終楽章プレストは花火が打ち上がるような上昇音型が印象的でお祭り気分の中で人々が集い、ダンスを踊っているみたいな陽気さがあります。
★★★★★
 
 
・交響曲 第5番 変ロ長調 K.22
 
第1楽章音楽にパワーがあって引き込まれます。モーツァルトがシンフォニーを書く自信が少しついた表れを示している気がします。第2楽章はト短調で書かれていて、その哀しみにも似た楽想が後の短調作品がより一層陰影感を加えていくことになる種がここにあるように思います。あっという間に終わってしまうリズム重視の終楽章はアレグロ・モルト。
★★★(★)
 
 
・ニ長調 K.32 「ガリマティアス・ムジクス」
 
 シンフォニーというより短い民謡とか舞曲を連ねた組曲みたいな音楽で、全部で18曲からなるのですが、その配列や選曲は演奏家の判断にゆだねられることが多いです。ここでホグウッドはⅠ.モルト・アレグロ Ⅱ.アンダンテ Ⅲ.メヌエット&トリオ Ⅳ.フィナーレと一応シンフォニーの体裁をとった形にしています。
バロック音楽を思わせるアンダンテや格式ばったメヌエットなど全体的に意図しているのか古風な手法があります。
★★
 
 
・交響曲 ニ長調 K.81(73i) 
 
 1770年のイタリア旅行の際にローマで書かれたとされていますが自筆譜が存在しないため、父レオポルド作とも言われている真疑がはっきりしない作品。その作曲年代も写譜やモーツァルトの手紙より推定されているものです。
第1楽章のしつこいリズムの協調など同時代のシンフォニーの基本スタイルで書かれているがモーツアルト作としてもなんとなくイマジネーションが足りない。でも第2楽章のオーボエと弦楽器が対話するように歌い交わすところなんかは美しくてイイです。
★★(★)
 
 
・交響曲 ニ長調K.97(K.73m) 
 
この曲も前のニ長調K.81(73i)と同様、イタリア旅行の時の作品とされています。
ここではトランペットとティンパニが加わって少し大きな編成になってイタリア様式の急緩急の3楽章ではなくてメヌエット楽章を含む4楽章で出来ています。音楽学者によるとこの第3楽章メヌエットはどうも後から書き加えられたのではないのか?ということです。
編成に金管と打楽器が加わったことで華麗な響きにはなっていますがなんとなくモーツァルトとしてはヤボッたくてスマートさがありません。終楽章は短いながらもそれなりに良く書けていると思います。
★★
 
 
【演奏メモ】
第1番や変ホ長調K.19aの第1楽章における軟水のような音色きや第5番の第2楽章の影を帯びた響きが印象的です。

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