モーツァルト:交響曲全集完聴記(その9)

今週はモーツァルトのホグウッド&シュレーダー、アカデミー・オブ・エンシェント・ミュージックによる交響曲全集の完聴記の9回目、1773年に書かれたシンフォニーをきいていきたいと思います。

CD7

・交響曲 第26番 変ホ長調K.184(K.161a)

休止なく3つの楽章が続けて演奏される8分程のシンフォニーで、内容も編成にもフルートとオーボエが各2本にトランペット2本も加わるので劇場作品のための曲のように思われます。流れが滞留することなくモーツァルトらしい絵葉書の裏に描かれた気の利いた絵を見ているようです。
★★☆



・交響曲 第27番 ト長調 K199(K.161b)

このシンフォニーも全3楽章から成り、こうやってまとめてきいてくるとこの頃のモーツァルトはウィーン風のメヌエット付の4楽章形式で書いてみたり、イタリア風序曲の急緩急の3楽章でみたり、その時々のTPOに合せて仕事をしながら試行錯誤を繰り返した様子がきこえてくるような気がします。
編成は前の曲と比べるとはるかに小さく弦楽器にフルートとホルンが各2本入るだけです。
第1楽章アレグロはさわやかな流れるようなメロディー・ラインがディヴェルティメント的です。第2楽章アンダンテは弱音器をつけたヴァイオリンがアリアのような抒情的なメロディーが歌い他の弦楽器が場ピチカートで支えます。ガヴォットみたいなリズムがエレガンスで、少しロマンティックで、ウットリきき惚れてしまいます。
終楽章プレスト。フーガにより堂々と締めくくられていきます。立体的な造形は後の「ジュピター」シンフォニーに進化していく予感を伝えます。
★★★☆



・交響曲 第22番 ハ長調 K.162

この曲も3楽章ですがトランペットが編成に入り、第1楽章からイタリア風序曲を思わせるリズムと軽快さがあります。イタリア旅行から帰って間もなく書かれたといわれ、モーツァルトがより学習しているなぁ~と感じます。
アンダンティーノ・グラツィオーソの第2楽章はふたつの楽章の繋ぐ間奏曲風なものです。
終楽章はバロック時代の特徴的なリズムが印象的でそれに気を取られている間に終わってしまうトータル8分位の演奏時間です。
★★★



・交響曲 第23番 ニ長調 K.181(K.162b)

やっぱり第23番も急緩急の3楽章が続けて演奏されるイタリア風序曲のような8分ほどシンフォニーです。
第1楽章はトランペットが入っているので強弱の対比がより一層引き立ち、繰り返される転調が曲に緊張感を与えていると思います。アンダンテグラツィオーソの第2楽章では主役がオーボエになって弦楽器とコンティヌオはとても押さえて伴奏に回ります。そのオーボエが奏でるメロディーの美しいこと!オペラのプリマドンナみたいです!この時期のシンフォニーで一番のきき所といえます。もう少しききたいと思っているうちに終わってしまいます。
そのひと時が勇ましいロンド形式の終楽章、プレスト・アッサイに入ると全力疾走で突進していってしまいます。
★★★★


・交響曲 第24番 変ロ長調 K.182(K.173dA)

1773年に作曲されたシンフォニーに第26・27・22・23番と同様に3楽章形式でイタリア風になっています。
編成にトランペットやティンパニを含まず、調整の関係もあるとおもいますが少し落ち着いていて、パストラール的です。そのためか特徴に乏しいという第一印象になってしまうのが惜しい作品です。ただし、全曲に品の良さ香っている一品といえるかも知れません。
★★★


【演奏メモ】
やっぱり第23番の第2楽章のオーボエは音色が典雅であり、他の緩徐楽章でもデリケートな表現はこのシリーズの特徴です。先鋭化する演奏の中で存在が後退してしまっているのは致しかたないのかもしれません。

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