モーツァルト:交響曲全集完聴記(その12)

クリストファー・ホグウッド追悼企画のモーツァルトのシンフォニーの連続試聴記、第12回めになりました。

・交響曲 第28番 ハ長調 K.200(K.189k)

1773年から74年に書かれたシンフォニー群の最後に書かれたといわれます(1774年11月)
第25番・第29番を書いた後の作品としてきくと私たちの耳には「後戻りしたのでは?」ときこえますが、当時としては常識的な(むしろそれらより質の良い)古典派シンフォニーでしょう。
編成はオーボエ、ホルンが各2本に弦楽器、そこにトランペット2本にティンパニを加えたやや大きめの規模です。
第1楽章、活発な動きに満ちた音型に彩られた楽章です。
第2楽章、やさしさに包まれるようなアンダンテ。第41番「ジュピター・シンフォニー」の第2楽章できかれる木の葉が舞い落ちていく様なモチーフが出てきます。それを繰り返して変化を加えていっているように思います。
第3楽章、メヌエット。トリオでの第1、第2ヴァイオリンによる二重奏がシンフォニーというよりもセレナード風なのが印象的です。
終楽章はトランペット、ティンパにも戻って来て祝典的な盛り上がりをつくっていきます。ティンパニは花火を打ち上げたようなインパクト、オーボエにはかなりきき所があって、独自性が与えられています。
★★★☆


・シンフォニア ニ長調 K.121/K.207a 「偽の花つくり女」序曲

1775年に初演されたオペラの序曲にK.207aのケッヘル番号のついたプレストの終楽章を加えてシンフォニーの形にして演奏しています。
第1楽章アレグロ・モルト~第2楽章アンダンテ・グラツィオーソ~そして終楽章がプレストの3つの楽章が続けて演奏される7分弱の曲です。
オペラの序曲らしく生き生きとした第1楽章、弦楽器主体の優美な第2楽章、終楽章はメリハリがあって爽快感が駆け抜けます。
★★★


・シンフォニア ニ長調 K.204(K.213)

1775年に作曲されたセレナード第5番から4つの楽章を抜き出しているシンフォニー・ヴァージョン。
第1楽章アレグロ・アッサイはトゥッティに続く即興的なティンパニが印象的です。その後は強弱、長調・短調が交替する初期のシンフォニーを思い起こさせるものがありますが、にぎやかなだけでこれといった特徴がなく仕事として書いたという側面が感じられます。
第2楽章アンダンテはセレナードでは第5楽章にあたり、フルート、オーボエ、ファゴットの管楽器群によるコンチェルタンテをきいているようですが、せわしない感じがして、もう少しゆったりしてしなやかで、そよ風みたいな優美さがあったら素敵なのに・・・とモーツァルトの作品だからこそ高みを求めてしまう贅沢さがあります。
第3楽章メヌエット&トリオ。セレナードの第6楽章。オーケストラの中からフルートが突出してきて鳥の鳴き声のようにピロピロ吹いていて、トリオではそのまま主役を務め、弦楽器の強奏に対してフルートのやさしいメロディーがなだめるみたいな対比をつくっています。
終楽章はセレナードでも終楽章の第7楽章になっています。
アンダンテ・グラツィオーソでゆっくりと始まったかと思うとアレグロの速い部分になります。以下それらの拍が異なる楽想が繰り返されるところが面白いです。2本のオーボエも多少活躍の場が与えられています。
★★★

【演奏メモ】
第28番では弦楽器のプルトを絞っているらしく、音がスケルトンのようになってそれを埋めるかのようにコンティヌオがきこえてきます。
ニ長調K.204ではセレナードが原曲ということもあって木管楽器に独奏的な役割が与えられていてオリジナル楽器の柔らかな響きが活きています。

コメント

このブログの人気の投稿

今週の1曲(18)~R.シュトラウス:管楽器のための交響曲「楽しい仕事場」

ブログの引越し

ありがとう保田紀子オルガンコンサートの開催