モーツァルト:交響曲全集完聴記(その14)

ホグウッド=シュレーダー指揮、アカデミー・オブ・エンシェント・ミュージックによるモーツァルトの交響曲全集の完聴企画も14回まできました。

CD12

交響曲 第33番 変ロ長調 K.319

1779年にザルツブルクで書かれたシンフォニー。前後の第32番、第34番などと同様に当初は第3楽章にメヌエットを含まないものでしたが、後にウィーンで演奏する機会があったのでしょう、メヌエットを加えて4楽章のシンフォニーとして伝わってきていて座りがいいためか、モーツァルトの交響曲をたくさんレパートリーにしていない指揮者も昔から取り上げています。例えばクレンペラーやセル、ヨッフム、カラヤン。近年ではアバドやムーティ、そしてあのクライバーまで!(そういえば父、エーリヒ・クライバーにも録音があったと思いますが)
第1楽章、第32番、第34番がトランペットやティンパニを編成に含み、祝典的で劇場型の音楽だったのに対してこちらはオーボエ、ファゴット、ホルン各2本に弦楽というシンプルなため愛らしくて、さわやかな流れのメロディーラインが素敵です。また、ジュピター音型といわれるモチーフが出てきます。まあ、第1番のシンフォニーにも使っているので年少より馴染みのものだったらしく、意図してやったわけではなく、、他にもあちこちの作品で使用されているので無意識のうちに出てくる身近なものだったのでしょう。
第2楽章、よく歌うアンダンテ・モデラート。俗にモーツァルトの「田園交響曲」なんて意味の分からない俗称を解説書の類で書かれていますが、伸びやかな旋律のこの楽章をきいているとまんざら的外れというわけではないとも思います。
第3楽章、きりっと引き締まっていて、後から付け加えられたという先入観できくせいかも知れませんが充実したメヌエットであると思います。
第4楽章はキビキビと楽しい旋律が湧き上がってきて心が躍ります。
全体としてとても親密で親しみ易いシンフォニーで、さすがに後期の作品と比べればややクラシカルな形式で書かれた交響曲という印象はありますが、名人による逸品といえるのではないでしょうか?
★★★★☆


・シンフォニー ニ長調 K.320 
    セレナーデ第9番「ポスト・ホルン」の交響曲稿

第33番の交響曲が書かれた直後に作曲されたといわれるセレナード第9番「ポスト・ホルン」から第1・5・7楽章を取り出してシンフォニー版として演奏しているものです。
勉強不足で申し訳ないのですが、こういった形で演奏されたことがあるのか分からないのですが、
全曲をきいている耳からすると抜粋版をきいたみたいな感じになります。
第1楽章はアダージョ・マエストーソのやや深刻な序奏に始まり雄大で堂々とした王者の風格といったアレグロ・コン・スピリトの主部に入っていきます。シンコペーションが印象的で打ち込まれるティンパニが音楽に重厚感が加えられます。
第2楽章、このセレナードで一番好きな楽章で、哀愁が漂い、ニ短調=ピアノ・コンチェルト第20番K.466にも通じるしっとりとした魅力があります。やっぱり原曲がセレナードということもあってデモーニッシュな方向にまでは傾かないのですがいいメロディーです。
第3楽章のプレストは細かいことにはあまり気にせず、ドカンと花火を打ち上げたように気持ちが晴々とするようなとにかく明るい音楽です。
★★★☆  (セレナード全曲なら★★★★★)


・交響曲第34番 ハ長調 K.338

1780年にポツンと1曲書かれたシンフォニーで、最初は第2楽章にメヌエットを含むハズだったのですがモーツァルト自身が削除しています。その削除されたメヌエットはハ長調K.409(383f)として独立してケッヘル番号がつけられている曲がそうだったのではないかといわれています。
第1楽章のアレグロ・ヴィヴァーチェは力強くて派手な始まりですが、長短の転調が表面的な華やかのみではない厳かな響きを生みだしています。
第2楽章、アンダンテ・ディ・モルト。繊細な音楽で室内楽をきくような親密さ、少しロマンテックな感じもあります。こういった目立たない交響曲でも充実したも音楽をきけるとここまでモーツァルトの交響曲を延々ときいてきた甲斐があるというものです。
第3楽章はアレグロ・ヴィヴァーチェ。ジグのリズムによる軽快で活発な音楽です。木管をソロイスティックに扱って耳を楽しませてくれるのも魅力です。
★★★★


【演奏メモ】
第33番の「ジュピター」音型をそれと分からせるように意識して表現しています。
「ハフナー・セレナード」のシンフォニー版の第2楽章ではオリジナル楽器特有のサッパリした響きを生かしてあまり悲愴的、デモーニッシュな表現に行きすぎないように演奏しているように思います。
第34番の第2楽章は小編成によるオーケストラということもあって非常に親密でデリケートな仕上りです。
木管楽器は全曲を通じてここでも柔らかく合奏から浮かび上がってきます。

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