ショスタコーヴィチ:交響曲全曲完聴記(その2)

ショスタコーヴィチの交響曲全曲完聴記、今週は第4番をきいていきたいと思います。



ショスタコーヴィチの交響曲の傑作という人もいるくらいの完成度と長さを誇ります。この曲の特徴は1935年から36年の約9か月をかけて手掛けられ、ショスタコーヴィチ本人が「自分の仕事の集大成」というような言葉を残しているようにかなり意気込んで取り掛かかって、途中破棄された断片までが「交響的断章~アダージョ」としても残っているように試行錯誤、難産の末に完成されたものの、リハーサルも最後になったころに突如スコアが引込められて1961年に初演されるまで封印されてしまったということです。
それはなぜか?当時スターリン治政下の大規模粛清の嵐が吹き荒れていて「赤軍のナポレオン」と呼ばれたトハチェフスキー元帥までも処刑されるという「赤軍大粛清」事件も発生した時で、その関係してショスタコーヴィチ自身まで当局の事情聴取まで受けていて、その前の1936年に初演したオペラ「ムツェンスク群のマクベス夫人」やバレエ音楽が批判の対象になっていてこともあり、彼自身慎重になっていたといわれています。

まあ、長い話をくどくど書いていてもしょうがないので曲について書いていきます。
すれっからしのショスタコーヴィチ・ファンが泣いて喜びそうな音楽が第1楽章からきこえてきます。打楽器はガンガン鳴り、色々なモチーフが出てくるは、金管も吠える・・・マーラーのカリカチュア?オマージュ?賛美?また、リズムがマーラーの交響曲第4番の冒頭の鈴の音にも似たものが一瞬顔をだしますが、これもそうでしょうか?
中間部では狂ったような激しいフーガが登場しますが切迫感があって「ヤバイ」といっていいくらいで、本当にショスタコーヴィチは「狂」の面を感じさせる作曲家であると感じる瞬間です(それが本人が計算ずくでやっている可能性はあると思いますが・・・)
第2楽章でもマーラーではよくきかれる「レントラー」による第1楽章と終楽章である第3楽章を繋ぐインテルメッツォのような形の楽章です。
ショスタコーヴィチにしては!?意外とマジメ君で書いてあるように思うが少々ヘンテコなズレタたメロディーが出てきます。
終わりの所でポキポキとやるフレーズがでてきますがその乾いた音の響きは墓地で踊るガイコツのような不気味さでゾッとします!
終楽章。ここでもラルゴにに始まるマーラー風の葬送行進曲から動きのあるアレグロへと突入していきます。リズムが裏拍でズラしたりして異彩を放ちます。
様々なモチーフが表れては消えを繰り返していくのですが、そこがミョーにシニカルというか醒めていてちっとも面白くないのがショスタコーヴィチの音楽たらしめています。
終盤にかけて突如、怒涛のごとく大音量で攻めたてられます。それが収まると荒涼とした大地にただ一人残されような孤独な感じのうちに曲が閉じられます。それは夢の中にもいるようで不思議な感覚になります。

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