今週の1曲(7)~ドヴォルザーク:ピアノ三重奏曲
今週ご紹介するのはチェコの作曲家 アントニン・ドヴォルザーク (1841~1904)の ピアノ三重奏曲第3番ヘ短調作品65 です。 この組み合わせでは次の第4番ホ短調作品90が「ドゥムキー」という副題もついていて有名ですが、それがボヘミアの民族色を前面に押し出した作品に対してこちらの第3番は彼の才能を見抜き世に紹介してくれたブラームスからの影響やリスペクトがあるように思われます。 ブラームスは室内楽の大家でもあり、ピアノ・トリオも書いています。当然、ドヴォルザークも感化されていたと思われ、2曲のピアノ五重奏曲や14曲の弦楽四重奏曲などにも名作があります。 この曲は1843年42歳の時に作曲後に改訂を施され同年に初演されました。前年に母親を失った悲しみの影があるといわれます。 第1楽章はアレグロ・マ・ノン・トロッポ。冒頭のヴァイオリンが高音で悲痛なメロディーを奏し、そこへ慰めるようにピアノが入ってきてきますが一緒になって泣き出してチェロも加わって嘆く―しかしそれでも曲の構成が崩れません。 第2楽章アレグレット・グラツィオーソはスケルツォ風の動きのある音楽で、弦とピアノのリズミカルで活発で小気味よいので雪原をそりで駆け抜けていくみたいです。 第3楽章ポコ・アダージョは美しいメロディーが歌い上げられ、この全体的にピーンと張りつめた感じのある曲で唯一ゆったりと音楽に浸れる場所です。 第4楽章アレグロ・コン・ブリオ。冒頭から荒々しく、熱っぽい民族舞曲のリズムに乗って音楽が進みます。そこに力強さ伝わってきてきいているこちらも熱くなります。 《DISC》 やはり「定盤」 スーク・トリオ (ピアノ:ヤン・パネンカ、ヴァイオリン:ヨゼフ・スーク、チェロ:ヨゼフ・フッフロ)がいいと思いますが、久しぶりに改めてきき直して感じたのは曲がそうなのか圧倒的にスークのヴァイオリンが主導しピアノとチェロを従属している印象を受け、曲が持っている荒々しさ、粗野な面を整えてきかせる演奏と思いました。